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【同一労働・同一賃金とキャリア形成】

 今年4月にパートタイム・有期雇用労働法第8条が改正されました。いわゆる「同一労働・同一賃金」に向けた法整備です。そんな中で先日、非正規労働者が正社員と同じボーナスや退職金を求めた裁判の最高裁判決が続けて2件ありました。結果はともに原告の主張が認められず、原告団のある女性は法整備後でも裁判所は正しい判断をしてくれないと嘆いていました。しかし、この判決内容をよく確認すると、改正法に沿ったものであることがわかります。原告個人の業務内容を正社員と比較したところ「同一労働」ではなかったので「同一賃金」にする合理性はないと判断されたのです。この結果を踏まえ、今後非正規労働者はキャリア形成を意識しつつ、自分の業務内容を把握しておくことが大切です。

 

「正社員よりもっと頑張っているのにこんなに待遇が違うなんて」と感じる非正規の方は少なくないでしょう。私も20年以上、20数社で派遣社員として勤務しずっとそう思っていました。しかし正社員登用の話が出る度に、それが思い上がりだと痛感しました。自分の担当業務とその成果は、正社員と同等またはそれ以上だとデータを作成しようとしました。しかし現れるのは正社員の業務内容や責任の重さの差ばかりだったからです。そのことを自分の仕事だけを見ている時は見極められませんでした。現在、キャリアコンサルタントとしてさまざまな企業でキャリア面談を担当していますが、正社員と非正規の方との業務内容の差はどの会社にも明確に存在すると実感しています。また、その差はパート・有期法8条改正を背景に、より明確になっています。つまり、多くの場合正社員とそれ以外は「同一労働」ではないのが現実なのです。

 

改正法によって正社員とそれ以外が必ず同じ扱いを受けなければならなくなったとよく耳にします。それは誤りで「同一労働」であった場合に限定されます。「同一賃金」にしたければ、まず自分の業務内容や責任範囲について見るだけはなく、職場全体を見渡してから自分のしている仕事がどういう位置づけなのかを把握しましょう。そこから「同一労働」であると判断したなら、当然の権利として「同一賃金」を主張しましょう

 

 

その主張を会社側が受け入れないのであれば、そんな前時代的な会社のために働き続ける価値はありません。相当の立場で受け入れる会社をさっさと探すほうが生産的です。一方で「同一労働」ではなかったと気づいたなら、今の非正規の立場のままでよいのか、あるいは仕事の質や働き方を変えるべきかを考えてみましょう。いずれにしても非正規雇用は「期間の定めのある労働契約」です。正社員よりも長期的な自分のキャリア形成プランを持っておく必要があります。