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【多様化社会における部下からの相談対応】

 平成の初め頃までは、人々のライフスタイルをはじめ、性別や年齢ごとの役割は画一的でした。つまり根強いアンコンシャスバイアス(無意識の偏見やものの見方)が存在していました。そのような社会では部下から相談を受けても、世間一般論で対応してもさほど問題はありませんでした。しかしここ10数年で多様化社会を迎えると、ライフスタイルもさまざまになってきました。上司が部下に相談を受ける際も画一的な対応では難しくなってきたため、個別化させて向き合うことが大切です。

 

とは言え、アンコンシャスバイアスにとらわれずに人の話を聴くのはとても難しいものです。例えば、「私、結婚するんです」と伝えられたら、たいていの人は反射的に「おめでとう」と言うでしょう。日常のコミュニケーションでは当然の切り返しです。結婚ってめでたいし、自分もうれしいと感じたから相手に伝えた方がいい、と考えるのは自然です。

 

しかし、カウンセラーの国家試験で「おめでとう」は必ず減点されます。これから始まるのは結婚によって仕事を辞めなければならない事情があるとか、結婚そのものをやめたいという話かもしれません。カウンセラーが相談者に「おめでとう」と言ってしまうと、相談者は「そうか、この人にとっても結婚はめでたいのか」と相談するのをためらいます。そうならないように、カウンセラーは自分のアンコンシャスバイアスに左右されない話の聴き方を日々特訓しているのです。

 

専門家でもそのような話の聴き方を身に着けるのに苦心しているのですから、アンコンシャスバイアスを取り払いつつ耳を傾け、解決に導くことをすべての上司に求めるのは無理があります。相談内容をフラットに受け止めるのが難しいのであれば、少なくとも次の3つを意識しましょう。

 

・相手の話を自分の主観を交えずに聴く、理解を示す

・相手が今困っていることは何かを確認する

・以上を踏まえてどのようなサポートが必要なのかを尋ねる

 

 

このようなケース、これまではこうだったとか、こういう時に〇〇はこうするものだろう、という判断はあとまわしでじっくり傾聴します。そしてどのようなサポートを求められているのか、まずは相談者のニーズを確認してから対応しましょう。ひとりひとりがあなたに求めることは、想像以上に多様化しているはずです。